コラム(中小企業庁メールマガジンより抜粋)

     
     目次 
        8/30号「御堂筋の一方通行も始まりは大阪万博」
8/16号「経営者に一生の友となりえる出会い・・」
8/2号「リーマンショックの逆風をてこに新事業展開」
7/26号「DA成功のカギは経営者にあり!」
7/19号「世界に発信できるブランド名「TOKYO WOOD」

7/12号「DXと大正時代の駅舎」
7/5号「宇宙のモビりテイを開発」
6/28号「現状に甘んじることのなき不動産業者」             
  中小企業ネットマガジン(8/30号)   
  ~御堂筋の一方通行も始まりは大阪万博~

大阪のキタ(梅田)とミナミ(難波)を結び、市中心部を南北に貫く御堂筋。
「雨の御堂筋」をはじめ数々の歌にも登場する大阪のメインストリートだ。
長さ4km6車線もある御堂筋は元々対面通行だったが、1970年の大阪万博が
きっかけで南行きの一方通行になった。すでに渋滞が慢性化するなか、万博が
開かれれば混雑はいっそう深刻になる。そうした事態を避けるため開幕2カ月
前の同年1月に一方通行化され、今に至っている。

御堂筋の一方通行のように、大阪万博を機に導入・普及となったものは多い。
たとえば動く歩道やモノレール、電気自動車、携帯電話など。ケンタッキー
フライドチキンはアメリカ館で日本に初お目見えし、明治ブルガリアヨーグルト
は同社社員がブルガリア館で本場のヨーグルトを試食したことがきっかけで
誕生した。大阪ではエスカレーターで左側を空けるという習慣も万博が始まり
だといわれる。

シヤチハタのインク浸透スタンプ「Xスタンパー」も万博で注目された商品だ。
スタンプ台でインクをつけることなく何度もスタンプを押せるもので、10
以上の開発期間を経て1965年に発売。当初は苦戦したが、万博で一変した。
各パビリオンが記念スタンプとして「Xスタンパー」を設置したところ、
スタンプ台不要という便利さが評判に。会期途中から設置するケースもあり
最終的には約40カ所のパビリオンで使用された。認知度は一気に高まり、万博
後には2倍、3倍と売れ行きを伸ばしていった。「出展の目的は一人でも多くの
方にXスタンパーを実際に使ってもらい、便利さを感じていただくこと」
(同社の舟橋正剛社長)。狙いはまさに的中した。

◆2025
年には同じ大阪で大阪・関西万博が開かれる。空飛ぶクルマや70年万博
にも登場した人間洗濯機など話題の出展があるが、「Xスタンパー」のように
中小企業の技術・製品が注目されるかもしれない。(編集子)
 
  中小企業ネットマガジン(8/16号)   
  ~経営者に一生の友となりえる出会い 中小企業大学校東京校~

日本政策金融公庫の調査によると、中小企業で後継者が決まっており後継者
本人も承諾している「決定企業」は10.5%にとどまるという。5年前の調査で
12.5
%だったのがさらに減少した。一方で「廃業予定企業」は57.4%(5年前は
52.6
%)にものぼる。衝撃的な結果で、事業承継問題に真剣に取り組まなければ、
近い将来、日本の中小企業は大幅に減少する危機に見舞われている。今や、わが
子が会社を継ぐのは珍しい時代になっている。

中小企業大学校東京校には、国の機関が実施する後継者を育成する専門コース
「経営後継者研修」がある。中小企業の後継候補となっている若者が10か月間
全日制で学ぶという全国でも珍しい育成方法を採る。学内には寮もあり、寝起きを
共にしながら、経営についてみっちりと学んでいく。研修生には担当講師が付き、
マンツーマンに近いかたちで経営者としての心構えを習得していく。

先日、第43期の研修生が研修の成果を披露するゼミナール論文発表と、終講式が
開催された。21人の研修生が、自分がこれから経営を担う会社について、課題に
基づく改善点などを披露した。どれも力のこもった力作ぞろい。発表会には、
研修生を送り出した企業の社長さんやゼミナール担当講師も参加していた。ある
社長は研修に送り出したわが子の成長に目を細めながらも、「現実の経営は
この通りにはいかない」と叱咤激励の言葉を贈っていた。印象に残ったのは、
ひとりの研修生について担当講師が講評した時のことだ。「正直に言って最初は
あなたが企業経営者になれるのか、と思っていた。それが10か月で経営者としての
自覚を持ち、向き合うようになってくれた」と、担当講師は途中から涙声になり
ながらも、その研修生の成長を評した。

◆21
人の若者はいろんな思いをもって、大学校にやってきた。中には、親である
社長から言われて来ただけ、という人もいただろう。それが、後継者の卵という
同じ立場の人間が互いに学びあい、刺激を受けあうなかで、後継候補としての
覚悟が築かれていった。その姿を見てきたからこそ、講師は涙を流したのだろう。

「経営者は孤独だ」とは、よく聞く言葉だ。厳しい経営判断を誰にも相談
できずに決断しなければならないこともある。だからこそ、同じ立場の経営者の
友人が大切だ。最終的には自分で決断するとしても、その過程の悩みを聞き、
適切なアドバイスを得られるのは心強い。今回、中小企業大学校で学んだ21人の
研修生は、経営に求められる知識だけでなく、いざという時に語り合える友を
得た。終講式で互いを思いやる姿にも、それが表れていた。家業を継ぐ決断を
する若者が減っている時代だからこそ、会社を成長に導く役割を担える経営者が
一人でも多く育ってもらいたい。(編集子)
 
 
  中小企業ネットマガジン(8/2号)   
  ~リーマンショックの逆風をてこに新事業展開~

今年3月まで放送されていたNHKの連続テレビ小説「舞い上がれ」は、モノ
づくりの街、東大阪が舞台だった。ねじ工場を経営していた父が他界し、経営を
引き継いだ母を支えるヒロインの奮闘が描かれている。リーマンショックを
きっかけにパイロットの夢をあきらめたヒロイン。事業承継やリストラ、新たな
事業へのチャレンジ、地域との調和。リーマンショック以降、多くの中小企業が直面した課題をタイムリーに取り上げていた。

ドラマが最終回を迎えて間もなく、「DXセレクション2022」グランプリを
獲得した山本金属製作所を訪問する機会があった。本社があるのは大阪市平野区。
東大阪同様、昔からものづくりの工場が集積するエリアだ。山本金属製作所は
本社周辺の廃業した工場などを居ぬきのまま買い取り、オフィスなどに利用
していた。周辺の工場がマンションや住宅に姿を変える中、そこだけが昔ながら
の町工場の風景が残っていた。どこか「舞い上がれ」の原風景の中にいるような
感覚になった。

金属部品の切削加工を手掛ける山本金属製作所は、リーマンショックの逆風を
てこに事業を拡大させた会社だ。自転車部品など下請けが主力だったが、下請け
からの脱却を目指し、センシングやモニタリング、データ分析などの技術を蓄積。
切削加工工程の「見える化」を実現した。その成果をソリューションとして他の
企業にも提供する。取引先の数は600社を超え、リーマンショック前の10倍以上
に広がったそうだ。

現在、山本金属製作所が力を入れているのが、ロボットシステムインテグ
レーション(SI)事業だ。センシングやAI(人工知能)の技術をロボットに
応用し、人がやっていたさまざまな作業をロボット1台が自動でこなす。
山本憲吾社長は「最小限の人で高度なものづくりを実現できる。ロボットやAI
活用することで、人手が足りない中小企業の事業継続が可能になる」と指摘する。
近い将来、ロボットが人手不足に悩む中小企業の救世主となる日が来るかもしれ
ない。(編集子)
 
  中小企業ネットマガジン(7/26号)   
  DX成功のカギは経営者にあり! フジワラテクノアート~

◆中小企業にとってDXは避けて通れないテーマとなっている。しかし、実際に
DXで成功したケースは多いとは言えないようだ。なぜなのか。過去の調査では、
中小企業でDXが進まない要因として、DX・IT人材の不足を挙げる企業が多い。
これらの要因は確かにあるのだが、さまざまな中小企業を見るなかで、やはり
DXへの認識が経営者に正しくなされていないことを痛感する。

◆DXとはデジタルで事業を変革(トランスフォーメーション)させることである。
変革が主眼で、デジタルはそのためのツールに過ぎない。しかし、DX導入が
進まない企業を見ると、デジタルツール導入に関心がいき、肝心の変革を忘れて
いることが多い。さらに、デジタル導入を社員任せにし、経営者は我関せず
というケースもある。自社をどう変革させるかを考えるのは経営者の役割だ。
わが社のDXはなぜ進まないのかと首をかしげる経営者は、DXの目的と手段を
はき違えていないのかを改めて問うてみてほしい。
 
◆岡山で清酒や醤油などの醸造食品を製造する醸造設備を受注生産するフジワラ
テクノアートは、DX導入で大きな成果をあげた代表格と言える企業だ。同社は
まず、自社の将来像を「醸造を原点に、世界で『微生物インダストリー』を
共創する企業」と掲げ、実現するためにデジタルの活用が不可欠であると位置
づけた。同社も最初はデジタルスキルのある人材はたった一人だった。しかし、
副社長を筆頭に、社内の改革意欲のある人員を集め、手探りでスタートさせた。
当初から全社員に関心をもってもらえるように、改善策を徹底的にヒアリング
することから始め、参画意欲を高めた。製造現場など、それまでのやり方を
変えることに抵抗を示す部署もあったが、副社長が自ら、なぜ変革が必要かを
現場に説いて回った。これらの努力で短期間に21ものデジタルツールを導入し、
業務の効率化や経営を見える化を実現させた。

◆全社でDXに取り組む中で、デジタル関連の資格を取得する社員が延べ21人も
誕生するなど、社内のデジタル人材の育成も自然と進んでいった。今後はAIを
活用して酒造りに欠かせない杜氏の技能伝承をサポートするシステムを開発する
など、取引先企業に役に立つことに取り組むなど、同社のDXは着実に進化して
いる。同社のケースを見ると、なぜDXに取り組むのか、経営者が社員の理解を
得られるまで何度でも説明し、取り組みの最前線に身を置くことが、DXを成功
させる第一段階と言えそうだ。(編集子)
 
  中小企業ネットマガジン(7/19号)   
    ~世界に発信できるブランド名「TOKYO WOOD」~

今や日本国民の4割近くが発症している花粉症。国民病ともいえる花粉症
に対して岸田文雄首相が先ごろ国として対策に本腰を入れていく方針を示し、
話題となった。そこで思い出したのは石原慎太郎東京都知事(当時)の花粉症
対策である。2005年にスギ林が多い多摩地域を公務で訪れた際、花粉症を発症
した石原氏は対策の強化を打ち出したのだ。

その内容はスギの主伐と間伐。このうち主伐は木材用に切り倒すことで、
替わって花粉の少ないスギの苗木を植えていく。この対策を円滑に進めるうえで
重要なのは伐採した木の使い道である。木材の行き場がなければ植え替えは
進まない。そこで東京都は多摩産材の活用拡大に乗り出した。学校や図書館
といった公共施設のほか、鉄道会社が駅舎の改築に利用するケースも出ている。

住宅での活用も進められている。なかでも注目されるのが小嶋工務店
(東京都小金井市)の取り組みだ。地元・東京の木材を活用した地産地消の
家づくりを進めている。手間暇のかかる天然乾燥にこだわるなど厳しい基準を
設定し、「TOKYO WOOD」としてブランド化に取り組んでいる。林業者や製材所
など関係者は当初、強く反発したが、同社の小嶋智明社長は辛抱強く説得を続け、
協力を取り付けた。

ブランド名も小嶋氏の発案だ。「多摩産材」との呼び方が普及していたが、
「東京の木を日本一のブランドにするには世界に発信できるネーミングが
必要だ」として、周囲の反対を押し切って「TOKYO WOOD」という新しい名称を
採用した。さらに社名も「TOKYO WOOD」に変更したいと希望している。「東京の
木を活用することで循環型の林業を復活させ、東京の森を守り続ける。こうした
取り組みは私一代の話ではない」と小嶋氏。そのためには個人の名前を冠した
社名はふさわしくないというのだ。いつの日にか「TOKYO WOOD」という新社名
がお目見えするかもしれない。(編集子)
 
       
    
  中小企業ネットマガジン(7/12号)     
  DXと大正時代の駅舎~

山形県の赤湯駅と荒砥駅を結ぶ山形鉄道フラワー長井線は今年、全線開通から
100
周年を迎えた。開業は大正2 (1913)。その10年後に全線が開通した。
国鉄の分割民営化の荒波を乗り越え、現在は第三セクター方式で営業している。
2
両編成のワンマン列車は路線名を表すように花柄のデザインがラッピングされ、
乗客たちの心を和ませている。

この路線には全線開通当時の駅舎が今も残っている。長井市にある羽前成田駅
は大正11年の建造で、国の登録有形文化財に登録されている。木造平屋建ての
駅舎からせり出した昔ながらの玄関ポーチ。アンティークな待合室は実に趣深い。
切符売り場や囲炉裏テーブル、振り子時計。ぼさぼさ頭の金田一耕助が
ひょっこり現れてきそうな雰囲気だ。

部品加工メーカーの丸秀(東京都大田区)は、羽前成田駅のほど近くに主力
工場を構えている。代表取締役の小林隆志氏によると、進出してから50年以上
になるそうだ。「長井は創業した祖父の出身地。長井から東京の工場に働きに
来てもらっていたが、『ゆくゆくは地元に帰りたい』と話す従業員も多く、
工場進出を決めた」という。会社の成長とともに1つだった工場は3つになった。
地元の雇用に大きく貢献。地域に根差して事業を展開する。

のどかな集落のはずれにある工場はIoTを積極的に活用し、スマート
ファクトリー化が進められている。2022年には先進的なDXの取り組みを表彰する
DXセレクション」に選出された。目標としたのはQCD(品質、コスト、納期)
の別次元への引き上げだ。汎用のソフトや機器を活用し、低コストで最大限の
効率化を実現させた。EVシフトという激変に備えた挑戦で、他の中小企業にも
大いに参考になる取り組みだ。

取材を終え、駅の待合室で1時間ほど帰りの電車を待った。時代の変化に
適応するため変化を続ける工場と、時代が止まったような駅舎。100年の歴史を
1
日で旅をしたような、そんな不思議な感覚にとらわれた。 (編集子)  
   
       
 
  中小企業ネットマガジン(7/5号)     
  ~宇宙のモビリティを開発~

◆まもなく七夕。織姫と彦星は今年も無事に出会うことができるだろうか。
古の時代から、人々は遠い宇宙に思いをはせ、さまざまな物語をなぞらえてきた。
七夕の織姫と彦星の伝説は、中国が起源とされるが、今では日本のみならず、
アジアの広い国々でさまざまな言い伝えがあるという。

◆株式会社Pale Blueは「宇宙のモビリティを提供する」という大きな目標を
掲げるベンチャーだ。東京大学大学院航空宇宙工学専攻の小泉研究室にいた
メンバー4人で2020年4月に創業した。水を原料とする人工衛星の推進機と
推進剤を開発している。衛星の推進剤にはこれまで人間にとって有害であったり、
希少で高価だったりする材料が使われていた。水という安全で安価な材料が
実用化できれば、宇宙開発にとっても大きな一歩となる。

◆同社が開発した水による推進剤と推進機はすでにいくつかの衛星に搭載され、
宇宙空間で運用が始まるなど、実績を積み重ねつつある。Pale Blueの浅川純
社長は「月面基地建設や人による火星探査が計画されているが、そのためには
大量の物資を運ぶ必要があり、安全で安価な推進機と推進剤は必ず必要になる
技術」と意義を語る。現在は小型衛星用の推進機を開発するが、将来はより
大型の衛星用にも挑戦していくという。

◆地球の近傍の宇宙空間には、今でも役割を終えた人工衛星や衛星が細かく
砕かれたものが無数にあり、スペースデブリとして高速で地球上空を回っている。
人類が宇宙開発に乗り出すようになって以降、その数は増える一方だ。安全な
推進機と推進剤があれば、スペースデブリを捕らえて適切な方法で地球に
落として消滅させるという手段も講じられる。さらには、人類が宇宙旅行を
楽しむ時代になっても、宇宙の環境を守りながら、移動手段を確保することが
できる。織姫と彦星も年に一度といわず、逢いたいときに逢えるようになるかも。
(編集子)
 
   
       
     
中小企業ネットマガジン(6/28号)  
   ~現状に甘んじることなき不動産会社~

「不動産」「エステート」「地所」。これらは不動産会社の名称によく
使われるワードだ。おもしろみはないが、わざわざ「ウチは不動産会社です」
と説明する必要はない。このほかにも「ハウス」「ホーム」「ルーム」といった
ワードでも不動産らしさを出せる。こうした常識にあえて逆らい、不動産業
らしからぬ社名を付けているのが株式会社ソロン(佐賀県佐賀市)である。
「現状の不動産会社にはなりたくない」(平山浩美代表取締役)との思いから
1996
年の創業時に名付けたという。

ソロンは古代ギリシャの政治家の名前である。貴族と平民との対立が激化する
なか、債務の帳消しや民衆裁判の設置など平民寄りの改革を断行した「ソロンの
改革」で知られる。社名にふさわしく、同社ではDXで改革を行った。業務アプリ
構築クラウドサービス「kintone」を導入し、取り扱い案件の進捗状況や顧客・
不動産物件の情報などをリアルタイムで一覧できるようにした。

これらの情報を見やすくするため、社員は縦長と横長のディスプレイを使用し、
パソコンと合わせて3つの画面を自席で閲覧できる。「まるでIT企業のような
オフィスだ」と言われるそうで、社名だけでなく、社内環境も不動産業らし
からぬ様子になっている。こうした取り組みが評価され、同社は今年3月、
経済産業省のDXセレクション2023で優良事例に選定された。

「現状の不動産会社にはなりたくない」として社名を付けた平山氏には座右の
銘がある。それは、松下幸之助ら多くの偉人に語り継がれてきた名言「現状維持
は後退である」。世の中が刻々と変化するなか、旧態依然と変わらずにいると
後れを取ってしまう、という意味だ。その言葉どおり平山氏は、現状の2店舗
に加え、佐賀、福岡県内に15店舗を新たに開設する計画を抱いている。改革者
の名を看板に掲げる同社は、現状に甘んじることなく、さらなる改革を進めて
いく考えだ。(編集子)
   
 
         
    

Home ・組合のご案内 ・組合員リスト ・賛助会員リスト ・業界リンク ・コラム(中小企業庁メルマガ)

 Copyright (C)西日本プラスチック製品加工協同組合 All Rights Reserved.